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講師プロフィール |
| 東北公益文科大学大学院 博士後期課程 開設 （平成19年度） |
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| 議員力は、「法務」と「財務」の研鑽による見識がポイントです これからの議員力としては、「法務」と「財務」の２つの観点が重要なポイントとなります。この２つの観点の研鑽、習得が必要となります。 とりわけ、議員力向上にとって、「財務」分析力が欠かせません。「自治体の財政分析」の手法を学ぶことが重要であります。 自治体の財政分析においては、次の１０の観点から、研鑽、習熟することが重要なポイントです。 １ 自治体の提供している事業・サービスと各会計間の全体像を把握する ２ 自治体財政健全化法に基づく財政分析・財政診断ができるようにする ３ 首長になった目線により自治体の経営改革を推進する ４ 情報収集や情報交換を推進し自治体や地域住民と問題、課題を共有する ５ 自分の得意専門分野を作り情報収集に努め政策立案を提案する ６ 議員活動を通じて政策立案や条例制定を提案する ７ 地域振興や地域活性化、生活安定化などの視点より予算分野を選択し集中的な配分を提案する ８ 中・長期的な視点より財政健全化、財政運営を提案する ９ 自治体経営の視点より各セクター間の連携・協働を提案する １０ 議員マニュフェストの作成や情報誌発行を検討する １ 自治体の提供している事業・サービスと各会計間の全体像を把握する まず重要な点は、各市町村自治体では、どのような事業やサービスの提供を実施しているのかを把握する必要がある。また、それらの事業やサービスの提供は、どのような会計によって賄われているのかを把握することである。 例えば、一般会計のほかに、特別会計はどのようなものがあるのかその内容はどうかなど、全体像を把握することがポイントである。各会計間の関係性や重複等、細かな点は初めのうちは特に気にする必要はない。自治体財政の全体像が解れば、自然と細かな点も理解できるはずである。経営的な視点や経営的センスで自治体財政を分析できるので安心されたい。 自治体財政健全化法と呼ばれる、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」においては、分析の対象範囲とされたのは自治体の全事業・サービスである。 従前の法律では、一般会計が中心でこのような事業展開の範囲までが対象とされていなかったため、自治体財政の全体像が把握できなかったわけである。「指標の対象」は、「フロー指標とストック指標」の観点より判定される。自治体の事業活動全般を把握するため、対象となる会計の範囲は「普通会計」に加え病院等の「公営企業会計」や「自治体出資法人や外郭団体の債務状況」まで対象範囲が拡大されている。 財政健全性の判断基準指標は、①実質赤字比率、②連結実質赤字比率、③実質公債費比率、④将来負担比率の４つで、これらの指標は、財政赤字状況の把握と同時に、将来の負担状況や資金不足状況を表す指標として重要である。 ２ 自治体財政健全化法に基づく財政分析・財政診断ができるようにする 自治体財政分析に関しては、筆者の著書等を活用されたい。総務省のホームページには、全国の自治体の決算統計や財政関係資料などが詳解されている。中でも、「地方財政状況調査関係資料」（http://www.soumu.go.jp/iken/jokyo_chousa_shiryo.html）には、「地方財政拍車」や「決算カード」など、地方財政に関する資料データなどがまとめと掲載されているので参考にされたい。この資料データが、理解できれば十分である。 財政分析で重要な点は、3～10年間の数値の動向や変化を分析することである。分析する数値は、増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、または増減を繰返しているのか、その数値の動向や傾向を把握することが重要である。 次に、その要因や理由について分析し、原因を明らかにし、把握することが重要である。 ３ 首長になった目線により自治体の経営改革を推進する 執行機関は政策実施について、常に批判の目に晒されているので、日頃、緊張緊迫した行政執行を行っているといえよう。 翻って、議員の公務、責務とされている議会開催の状況をみると、一般的に議会開催は、3月予算審議の議会、6月補正審議の議会、9月決算審議の議会、12月補正の審議等の議会が開催されている。この議会開催期間については、町村は1週間位、一般市は2週間位、中核市・特例市・政令市は3～4週間位、都道府県は4~7週間位であろう。 もちろん、議会審議の期間外でも、「自治体行政の監視等の公務を担っている」わけであるが、議会の休会中は一般に緊張感が薄らぐことは否めないであろう。議会の休会中は何しているのか？議会の休会期間中の議員活動は休みなのか？議員活動とは何なのか？と、地域住民より厳しく問われる事態が予想されるといえよう。 仄聞するところによれば、議員報酬は議会開催中の委員会出席や本会議出席を基準に報酬を支給する、という自治体が出現しているといわれるが、今後、このような措置をとる自治体が多くなることが懸念される。議員報酬は議員活動に見合った金額にすると。 その意味では、議員の職務は、議会開催中の行政執行の監視の役割や機能にとどまらず、後述するように、政策提案や政策立案を図るために、情報収集や情報交換などの自己研鑽に努めると同時に、地域住民等との意見交換等を通じて、内向きの議員中間の活動展開から地域住民や執行機関に向けた外向きに働きかけを展開する活動形態などが重要なポイントとなると筆者は考えている。 最近、名古屋市や鹿児島県阿久津市のように、議会と市長が対立する自治体が散見されるが、筆者は両者間が緊張関係を保持することは重要であると考えているが、感情的に、また不毛な対立をすることは賛成しかねるものである。 議員諸兄は、首長になる可能性もあるわけである。首長の目線で、自治体執行部を監視、助言、提言する機能や役割を担うべきである、と筆者は考えている。 ちなみに、山形県鶴岡市の市長退任に伴う市長選挙に立候補した３氏は、いずれも現職の市議会議員であったことを明記しておきたい。 ４ 情報収集や情報交換を推進し自治体や地域住民と問題、課題を共有する 行政監視等の議員活動の中で、特に政務調査費の支出等が監査対象とされることがある。 若手議員の中には、政務調査費の支出状況を自分のホームページＨＰに公開している例が多々ある。筆者の著作も参考図書として購入が公表されていることが確認できる。 また、研修会や研究集会等の出席旅費や会費等も公開されている。 いずれにしても、自己研鑽のための情報収集や情報交換にとどまらず、地域住民等を巻き込んだ研修会や勉強会等を開催することにより、地域固有の課題や他地域との共通課題の解決を図るための活動の展開や実践度、充実度が問われる時代がすぐに来ることが予想される。 ５ 自分の得意専門分野を作り情報収集に努め政策立案を提案する これらの自己研鑽や交流活動等を通じて、自分の得意分野や専門分野を確立していくことが重要となります。自分の関心が有る、また興味がある分野を持つことが重要である。 ある自治体関係者から聴いた話である。女性議員の話しで、パートに出るよりも議員になった方が面白いと。社会貢献ができて、時間給に換算したら高給だと、喜んで地域社会に溶け込んで議員活動していると。女性議員の方が勉強も良くしているとも言われが、その話を聴いて、男性である筆者は深く考え込んだ次第である。 ６ 議員活動を通じて政策立案や条例制定を提案する 自己研鑽や交流活動等を通じて自分の得意分野や専門分野が確立できたら、政策提案や条例制定に挑戦してみることを薦めたい。 もちろん、個人でできる人は頼もしい限りであるが、グループや仲間と議論しながら、政策提案や条例制定を目標に議員活動したら一層楽しいはずである。 筆者の経験であるが、10数年来、第３セクター研究学会の設立とともに学会を運営する事務局長として学会事務局の運営に携わってきた。いわば、裏方の仕事である。学会の研究会には欠かさず出席してきた。 研究会には大学の施設を借用して行っている。17時過ぎには終了するが、17時過ぎには場所を変えて居酒屋等で懇親会が行われる。一時話題になった「5時から男」に替わり、研究発表者等との意見交換が始まる。研究会はもちろんのことであるが、談論風発する懇親会の議論も楽しく、極めて示唆されることが多いのが実情である。筆者は、これらの研究会や懇親会における議論を踏まえて、論文や著作としたものが数多くある。その意味では、筆者が一番勉強する機会が得られたと、裏方仕事ができたことに感謝している次第である。 ７ 地域振興や地域活性化、生活安定化などの視点より予算分野を選択し集中的な配分を提案する 政策立案や条例制定等に力らを注ぐと同時に、予算配分において事業の重点的な選択を行うとともに集中的に配分することにより、地域振興や地域活性化を図り生活の安定を推進するような事業を提案することが重要である。 その意味では、執行部予算の組替え提案も重要であるといえよう。地域再生を促進するために「メリハリのある予算編成を行う」ことが重要なポイントである。 どのような事業やサービスを提供することが、地域振興や地域活性化、生活安定化などに役立つのか、議員個々人における研究調査や自己研鑽の成果の見せどころであるといえよう。 費用対効果等を勘案して、少ない財源でも大きな効果が期待できるように工夫することが重要な視点である。 事業実施の達成状況、行政投資に対する費用対効果、行政評価の検証など、事業に重点的に投資することにより事業効果が発揮できるように、事業実施の工夫を図ることは極めて重要である。 「箱物行政」と揶揄される市町村行政の発想の転換を図ることが、自治体の行財政システム改革のポイントである。 ８ 中・長期的な視点より財政健全化、財政運営を提案する 筆者の著書などを参考に、財政分析や財政診断の結果を踏まえて、今後の財政健全化や財政運営に対し、中長期的な視点から提案を試みることを薦めたい。 まず自治体当局に対し、中長期財政計画の立案作成を提案して、その計画案が出た段階で、財政計画等について、詳細に質問していくという方法を採ることも賢い方法といえよう。 議員が個人でやろうとする必要はない。自治体職員でもできないところが多いのが実態である。適切な質問ができればいいのである。 この財政計画の立案や作成ができれば、自治体財政計画づくり、財政改革のプロになれるでしょう。 ９ 自治体経営の視点より各セクター間の連携・協働を提案する 国や地方財政の危機的な状況を背景に、自治体においては財政難の面から民間活力の活用を図ることから指定管理者制度を導入し、「公の施設」の管理運営を民間企業等に指定する傾向にある。病院や上下水道等では、地方独立行政法人化が推進されている。 一方、公共施設整備や公共サービスの提供等においては、PFI事業手法や市場化テスト等の制度活用を各自治体は模索しつつ、導入を検討する自治体もあり、導入事例や適用例は年々増加傾向にあるといえよう。他方、NPO法人の設立も年々増加傾向にある。 各自治体では、さらなる経営システム改革の確立が愁眉の課題として認識や意識はされているものの、抜本的な決め手といえる政策や対応策に欠け、船が暗礁に乗り上げたような閉塞感が漂っている状況にあるともいえよう。 これら地域住民や民間企業、NPO等との連携や協働による地域に根ざした「新しい公共のあり方」について、提案できるように尽力されたい。 １０ 議員マニュフェストの作成や情報誌発行を検討する 議員活動は一過性のものではない。また選挙直前にのみ議員活動を強調するものでもないことは改めて言うまでもないことであろう。議員活動は、永続的、継続的な活動が求められる。 その意味では、筆者のように大学で研究や教育活動をしている者と共通する点が多々あるといえるでしょう。否、筆者以上に、地域社会において大きな役割や権能があり、地域を具体的に動かす力があるのは地方議会議員の方々であることは間違いない。 自己研鑽や交流活動等を通じて自分の得意分野や専門分野が確立できたら、政策提案や条例制定に挑戦してみることを薦めたい。個人でできる人は頼もしい限りである。住民グループや仲間の議員と議論しつつ、政策提案や条例制定を目標に議員活動したら一層楽しいものになるのではないか。 筆者の著書等を参考に、財政分析や財政診断の結果を踏まえ、今後の財政健全化や財政運営に対し、中長期的な視点から提案をすることを薦めたい。 各自治体では、自治体の経営システム改革の確立が愁眉の課題として認識や意識はされているものの、抜本的な決め手といえる政策や対応策に欠け、船が暗礁に乗り上げたような閉塞感が漂っている状況にあるといえる。 是非、地域住民や民間企業、NPO等との連携や協働による地域に根ざした「新しい公共のあり方」について、議員が自ら提案できるように尽力されたい。地域の再生、蘇生に尽力し活動する地方議会議員が、今後、数多く輩出されることを期待しているものである。 筆者は、研究交流研修情報提供機関として、「自治体の行財政問題を検討する勉強会」を関係者と共に、平成22年9月に設立した。今後は、自治体職員、議員、市民等への支援活動を推進する予定である。よりよい地域づくり推進に関心のある方は、是非参画されることを勧めるものである。 |
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